東京二期会オペラ劇場【サロメ】公演レポート

東京二期会【サロメ】2月23・26日組051.jpg

東京二期会オペラ劇場【サロメ】より サロメ:大隅智佳子/ヨカナーン:友清崇
写真:長澤直子

東京二期会オペラ劇場【サロメ】公演レポート

「人間のコミュニケーションの中心は愛である」
コンヴィチュニーがオペラに込める、人類への愛と希望のメッセージ

2月22日・二期会「サロメ」公演初日~東京は、オペラ最先端の都市

021.jpgクリックするとアルバムが開きますブラァヴォ(ブラヴィ)とブーが入り混じって飛び交い、終演後の客席が沸いた。ある程度は予想していた反応に、思わずニヤリとした。観客の数だけ、楽しみ方は様々にあって良いと思うし、時には、その感情を舞台にぶつける場があっても良いと思う・・・。それが劇場の役割で、これだから、劇場通いはやめられない!!全てのオペラファンにとって、劇場とは、新しい感動に出会うための場所である。説明的な何かを受け入れる場所では決してないのだ。
2月22日、二期会「サロメ」の幕が開いた。大胆な「読み替え」で知られるコンヴィチュニーの演出だが、実は、スコアを深く読み込み、全ては、その音楽から忠実に引き出されたもの。今回の「サロメ」は、全ての登場人物が、閉ざされた一室の中にいるという設定で展開する。そのため、歌い手には、体力・気力ともに、更に高いものが求められる舞台となっただろう。しかし、それが幸いしたのか、緊張は最後まで途切れることなく、それだけに、こちらも一瞬たりとも目耳ともに放せない。正に、自分の感覚をフル回転にして鑑賞に望む必要があり(笑)、どこか、スポーツの観戦と似たようでもある。
サロメ役の林正子の熱演は、演技・歌唱ともに美しく光る。大沼徹の「人間味溢れるヨカナーン」も良い。高橋淳のヘロデが、圧倒的な存在感で舞台を引っ張る。ゾルテス率いる東京交響楽団は、繊細かつ緻密な音楽に徹し、物語を巧みに支えた。

2月23日・東京二期会「サロメ」~一瞬のような100分間

DSC_8658.jpgクリックするとアルバムが開きますオペラの演出には、大きく分けて、2通りあるように思う。一方は説明的なもの。それは、オペラのストーリーを分かり易くするためにあり、音楽や言葉を補うもののように味付けがなされる。他方は独創的なもの。想像の余地が大きく、オペラを通して、様々な事柄を考えさせてくれる。勿論、どちらが優れているとかいうことではなく、好みの問題だと思う。
コンヴィチュニーによるオペラの演出は、説明的でもありながら、大胆で独創的である。見たもの其々が想像を膨らませ、様々に解釈する楽しみがある。更に言えば、我々が今生きているこの現代において、オペラというものが一体どのような役割を担うのか、考えるきっかけを示してくれる。そこが素晴らしい。
血なまぐさく・おどろおどろしいイメージしか抱いていなかった「サロメ」という禍々しい「言葉」を、コンヴィチュニーは完璧に覆してしまった。かつて、これほどまでに純粋に生きるオペラのヒロインに、出会ったことがあるだろうか!そこには、定められた宿命の中で、愛の存在に憧れつつ、己の信念に従って懸命に生きようとする、そんな純粋な女性の姿が描かれていた。オペラのラストでは、ヨカナーンもサロメも死なず、2人は手に手を取って、新しい世界へと旅立って行く。そしてオペラは終わるが、自分の中には新しい「サロメ」が生まれ、この先も生き続けて行く。そんな気さえしてしまう・・・。
サロメ役の大隅智佳子の、ムラ・無駄・無理のないなめらかな響きが、オペラ全体を牽引する。ヨカナーンの友清崇は、屈折した心理状態を見事に歌いきった。細かなアンサンブルに至る隅々までもが、血の通った印象で、多様な歌手層を擁する、この団体の日々の努力とその発展が見てとれる。国産オペラ(?)の新たな方向性を示したのではないか。


【公演データ】
平成22年度文化庁芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
2011都民芸術フェスティバル参加公演
オランダ/ネザーランド・オペラ及びスウェーデン/エーテボリ・オペラとの共同制作
東京二期会オペラ劇場  

主催:公益財団法人東京二期会
共催:社団法人日本演奏連盟
協賛:brother
助成:財団法人朝日新聞文化財団


サロメ
オペラ全1幕
字幕付き原語(ドイツ語)上演

原作:オスカー・ワイルド
ドイツ語台本: ヘドヴィッヒ・ラッハマン
作曲:リヒャルト・シュトラウス

会場: 東京文化会館 大ホール
公演日: 2011年2月 22日(火)19:00/23日(水)14:00※/25日(金)19:00/26日(土)14:00
※のみ、ペーター・コンヴィチュニー氏によるアフタートークあり

指揮: シュテファン・ゾルテス
演出: ペーター・コンヴィチュニー

舞台美術・衣裳: ヨハネス・ライアカー
照明: マンフレット・フォス
演出助手: ロッテ・デ・ビール、澤田康子、太田麻衣子

舞台監督: 幸泉浩司
公演監督: 多田羅迪夫

配役:22日(火)・25日(金)/23日(水)・26日(土)
サロメ: 林正子/大隅智佳子
ヘロデ : 高橋淳/片寄純也
ヘロディアス: 板波利加/山下牧子
ヨカナーン: 大沼徹/友清崇
ナラボート: 水船桂太郎/大川信之
ヘロディアスの小姓: 栗林朋子/田村由貴絵
ユダヤ人1: 大野光彦/髙田正人
ユダヤ人2: 岡本泰寛/菅野敦
ユダヤ人3: 与儀巧/新津耕平
ユダヤ人4: 松永国和/加茂下稔
ユダヤ人5: 境信博/畠山茂
ナザレ人1: 小田川哲也/北川辰彦
ナザレ人2: 西岡慎介/櫻井淳
兵士1: 吉川健一/井上雅人
兵士2: 福山出/倉本晋児
カッパドキア人: 須山智文/千葉裕一

管弦楽:東京都交響楽団

ブログやtwitterなど、WEB上でも、サロメに関する書き込みで盛り上がった。情報収集の中心は、既に、紙の媒体からネットへと移行したのであろうか。
以下、【二期会 サロメ】でのブログサーチ。多方面から、高い関心が寄せられた。

リトルウェブ・ブログ検索